社長を知る

代表取締役社長 水本 勇二

出会いは高校から

東放の前身は、有限会社東放興業といって、今でいうイベント会社でした。
プロレス、相撲、サーカス、歌謡ショーのようなコンサートを企画してチケット販売、運営していて、父の会社だったことから、高校のころから手伝うようになりました。
 
その頃から、アリーナコンサートのような大規模イベントが生まれて、サーカスやプロレスでも仮設のスタンドを組むようになり、設営という仕事が生まれてきました。
東北でもアリーナコンサートが望まれ、仙台市体育館等、コンサートができる会場も増えていきました。
 
そんな具合で、仮設のステージを組まないと…ということで、他に仮設をやっている会社がほぼなかったこともあり、うちの会社が見様見真似からやり始めました。
 
大学は、法律に興味があったので法学部に行きました。将来会社を継ぐという感覚はなかったですし、漠然と手伝っていただけだったので、建築や舞台系の勉強をすることは考えていませんでした。
大学に入ってからは、図面も書くようになり、ますます面白くなっていきました。

仕事が面白く、入社を決意

大学生後半の方に、このまま家業に入ってもいいと考えるようになりました。
ある程度仕事を任されたり図面を書くようになって、ゼロからものづくりを始めて成果が目の前に現れる。
どんどん面白くなっていきましたし、また、そういう人がいなかったので周りから求められていたということもあります。
 
入社してから、最初の5年くらいは、1年の半分は東京の会社に出向して、いろんな設備技術や機材について勉強していました。
その頃、コンサート、サーカス分野でも仮設スタンドの設計・設営の仕事が東放にも来るようになり、昔のように木の材料でその場でつくる方法では合わなくなっていきました。
 
鉄材で部材をつくって、釘がなくても組めるようなものを手探りでつくっていきました。鉄製の部材を組み合わせてステージをつくれるように工夫していきました。
 
イベントの進化とともに父の世代のやり方とはどんどん変わっていき、新しいやり方に対応できる人が求められるようになりました。

気づいた面白いこと

設営に使う、規格品が会社によって違いました。
 
昔からある歌舞伎関係のサイズと、演劇関係、コンサート系で尺、センチ、フィートが混在していました。今でもそうで、統一されていません。
分かりやすい例で言うと、同じ一畳でも、京尺と団地サイズでは実際の大きさが違うようなものです。
 
日本製の部材をメインに使うのか、アメリカ製か、ヨーロッパ製かでも違います。フィートやインチだったり、センチだったり、バラバラです。
 
私の場合は、書いてある数字を見れば規格が分かるし、サイズの変換も頭の中でできるようになっています。

自然な流れで会社を継ぐことに

父もまだ現役だったので、入社しても継ぐことは意識していませんでした。家内工業のような感じで少人数でやっていて、現場に追われていました。何かイベントがある時によそから人を呼んで、人数を増やして対応していました。コンサートの設営になるとそうはいかないので、人を雇うようになり、手伝ってくれる人と社員を増やしていきました。
 
継いだのは、入社して結構経ってから、40歳ぐらいの時です。自然な感じで継ぎました。その頃になると、興業はほとんどやっていなくて、設営業務がほとんどだったのでなおさらです。
 
歌謡ショーではなく、コンサートツアーというものが出て来て、セットも派手になっていきました。その最たるものはユーミンでした。10t車で、50台、60台の部材がやって来ました。元々のセットが大きすぎて地方の会場に入らない。どう変更したら入るかを考え、図面に表していきました。

手書きの図面からソフトへ

うちの業界ではCADソフトの中でもベクターワークスというものを1995年くらいから使っています。それまでは手書きでした。ソフトを使えるmac自体がそのころやっと入って来て、ベクターワークスが使えるのはmacだけでした。
 
業界がベクターワークスで書くようになってきていて、取り入れないとみんなに追いつかなくなってしまう状態でした。
というもの、東京のデザイナーがベクターワークスでつくり始めたので、その図面を変更するには、データを貰ってベクターワークスで開かないと始まらない。ソフトがないと見ることすらできないと。当時CADも使ったことがなかったので、手探りの状態から使いこなしていきました。
 
首都圏の大規模ツアーのセットがそのままでは地方の会場では入らない時があり、ツアー側も現地の会場のことはよく分からないので、現地の業者の腕の見せ所です。サイズや位置の調整を図面で表して、ツアー側に提案、打ち合わせしていきました。

ゼロからつくり、出来上るのが面白い

まったく何もないところから、ゼロからものをつくり上げるのが面白いです。出来上がって、それを見てお客さんが楽しむ感じや、驚き、楽しんでいる様子を見ると嬉しくなります。
 
一般的には照明や音響、装飾とかキラキラが好きな人が多いと思いますが、東放はキラキラを載せるための土台を組むプロフェッショナルです。
土台をつくる面白さは、まずそこが基本だということ。それがないと、照明も音響設備も、装飾も取り付けられず、他の人は何もできません。
 
私が一番やりがいを感じのは、他の人が分からないことを、上手く取りまとめてつくり上げる部分です。例えば、「この会場に関しては、水本さんに聞くしかない」ということで仕事がいただける。そういう実績で、会場側も「水本さんが来て大丈夫だと言っているから大丈夫でしょう、OKを出します」と言ってくださる。そういう時にやりがいを感じます。
 
今の私の立ち位置としては、会場とツアーの人間の間に立っています。私が行く現場には、別にチーフ、実働スタッフがいてがんばってくれています。
チーフたちも3、4回かしか行ったことがなくて、会場の細かい部分を把握できていないところに私が出向くかたちです。

チームワークなしではできない仕事

誰か一人がトップであるチーフをやって、それを周りが支えるかたちです。別の現場では役割が入れ替わります。
 
チーフをやる人間は、横のつながりをつくって、部材のすり合わせや、人のすり合わせをやります。大きなチームではあるけれども、現場現場でチーフがいて、それぞれが責任を持ってやっています。
 
チーフの仕事としては、全体を見るのであって、作業は要点のみ行います。ですので、ある程度年齢がいっても勤まります。また、チーフは熟練している上に、お客さんと直接やり取りするので、営業の役割も果たします。仕事をしながら、その仕事を認められることで次の仕事にも繋がって営業にもなるということです。
 
働いてきた年数も大事ですが、もう大丈夫、出来るねとなれば仕事を預けます。「いいからやってみろ、周りがサポートするから」と。何回かやっていくうちに自信がついて、「大丈夫です」という感じになっていく。そして、その仕事が大丈夫になったから、もうワンランク上げてこういう仕事も任せよう、とステップアップしていきます。
 
1人ではできない仕事で、チームワークが必要です。チーフになると、他の会社のスタッフもまとめないといけません。

意見を言い合える、風通しのいい社風

現場の雰囲気は、他の会社の人も含め、和気あいあいとしている感じです。大きな声が飛ぶ時もあるけれど、注意喚起のために大きな声で言わないと危ないからです。
現場によってチーフだったり、下についたりが入れ替わるので、フラットな関係になっているのだと思います。年代が違っても同じような話題で盛り上がったりしています。
後輩である自分がチーフで、先輩が下についた時に、先輩にものを言えないのは困りますよね?だから、言う時は遠慮なしに言うようになっています。
「こうやった方がいいのでは?」「いやこうでいいんじゃない」等、たまに意見のぶつかり合いもありますが、信頼関係があります。私としては、基本見守っています。
最終的に求めるところは一緒なので、外部の人間も入れて「どう思う?」と話し合って、どうやったらいいか総合的な判断をしています。

プロフェッショナルな人財を育成し続けたい

プロフェッショナルな人財を社内で育て、それぞれが自立して活躍できるようにしないと業界に追いつかないと思います。
だから、新しいことに皆を関わらせて、全員ができるようにしています。
 
元の図面はあったとしても、変更するだけの技術やノウハウが頭の中にないと図面に表せない。描く能力も操作する能力も必要になってくる。
それができると、現場での急な変更にも対応できますし、上手くいかない時でも変更・修正して進めることができるようになります。
 
昔と違って内容もスピードも進化していきているので、対応し続ける必要があります。

好きなことが仕事でできればベスト

私は、自分なりに楽しめる人生を送りたいと思っています。何をやるにしてもいやいややるようなことはしたくない。
昔よく言っていたのは、「趣味と仕事は同じだから」と。
 
この仕事を最前線で長く続けていられるのも、結局、やっていて好きだからそのまま仕事になって、それが持続しているからです。好きな仕事ができればベストだと思っています。
 
みなさんも、コンサートや舞台というものに興味があるなら一度やってみてはどうだろう?裏から見ることはなかなかなく、表のキラキラ部分で憧れはあるでしょうけれど、足を踏み入れてやってみないと本当のことはわからない。やってみて面白さ、やりがいを感じるか。チームワークに惹かれるか。
 
実際働いてみると、考え方も変わる可能性があります。興味があれば、ぜひ体験しに来てください。年中、設営していてアルバイトも歓迎です。
入社に関しても、好きを仕事にして、チームワークで臨機応変にやりたい人を歓迎します。